研究概要 |
細胞内情報伝達の要として機能するGTP結合蛋白質の多くは特定の膜マイクロドメインに局在することにより外界シグナルを細胞内に効率良く伝達することができる。パルミトイル化脂質修飾は三量体G蛋白質のGα(Gs,Gi,Gqなど)、低分子量G蛋白質(H/N-Rasなど)に見られ、これら分子の局在、機能を外界刺激依存性に制御していると考えられている。最近、私どもはゲノムワイドにパルミトイル化反応の責任酵素群を同定した。本研究では1)各G蛋白質をパルミトイル化する特異酵素の同定、2)パルミトイル化酵素の活性制御機構の解析、及び3)パルミトイル化酵素によるG蛋白質動態制御機構の解析を行う。 昨年度までに、Gαs、Gαqのパルミトイル化酵素を独自のパルミトイル化酵素ライブラリーを用いてスクリーニングし、DHHC3、DHHC7にGαサブユニットに対して著しくパルミトイル化レベルを促進させる活性があることを見出した。今年度は新たにGαi2をパルミトイル化する酵素としてDHHC3、DHHC7およびDHHC21を見出した。さらに、DHHC3とDHHC7をノックダウンにより機能抑制したところ、内在性のGαqのパルミトイル化レベルが減少し、細胞膜から細胞質にGαqが移行することを見出した。さらに、DHHC3がゴルジ装置に局在し、Gαqが細胞膜とゴルジ装置間を常時サイクルしていることを見出した(堤ら投稿準備中)。現在、Gαqの細胞内動態をFRAP,photoconversion法および全反射顕微鏡を駆使して可視化し、パルミトイル化酵素によるGαqの動態制御機構を明らかにしようとしている。このように今年度の研究計画は達成できたと考えている。
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