本課題ではヒト細胞の複製開始点結合タンパク質、ヒトORC2に着目し、相互作用する因子を基点とした染色体構築機能ネットワークの理解を、プロテオミクス技術を用いた因子群間のネットワークの解明、siRNAを用いた表現形の解析を交えて行うことを目的とする。特に、ORC1と結合していないS期からM期にかけてのORC2の振る舞い、機能を明らかにすることを重点的に行う。 18年度は、免疫沈降-質量分析により各細胞周期におけるORC2と相互作用する因子(ORC2BP)の探索を行うこととした。このために、ORC2にFlagタグを付加したものを安定的に発現する細胞株を樹立した。これを用いたORC2の精製を行う。また、精製後に質量分析による同定の作業を行うが、これに関しては、質量分析器およびカラムの最適化作業を行い、従来の10倍の同定感度を得ることができた。また、それにともない膨大なデータを処理する必要が生じたが、計算機によるインフォマティクスによりこれを克服しつつある。 並行して、ORC1結合因子として我々が同定したWD40蛋白質の機能解析を行ったところ、G1期が通常細胞の1.5倍ほどに長くなっていることを見いだした。このことは、この因子がG1期におけるORCの機能を触媒していることを示唆するものであり、複製複合体の形成、細胞周期進行とのリンクが想定された。 ORC2の相互作用因子は、複製のみならず染色体分配や細胞質分裂に関与している可能性が考えられる。代表者は18年度に京都大学から北海道大学に移動したばかりであるが、本助成により、これらを解析するための手法、染色体スプレッド法、タイムラプス顕微鏡観察などの手法などの、テクニカルな条件を確立し、また、測定機材の一部を調達することができた。
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