研究課題
微小管結合タンパクOrbitは、紡錘体微小管の先端にチューブリン分子を付加する活性を持ち、これが染色体の動き等を生み出す微小管ダイナミクスの原動力になっている。そのorthologueは広く真核生物に保存されている。orbit突然変異体では、分裂中期における染色体の整列、後期における分配、そして細胞質分裂の開始も異常となる。Orbitは、細胞分裂の進行に伴い、紡錘体微小管の他に中心体、キネトコア、セントラルスピンドル上にも局在が認められる。FRAP実験の結果から、このタンパクは細胞分裂装置と細胞質との間を行き来している動的なタンパクであることが明らかとなった。Orbitは、分裂期を通じて微小管ダイナミクスの制御に中心的な役割を演じるが、細胞分裂の各ステージに特異的な染色体などの動きが生みだされるためには、Orbitに加えてこれと相互作用するタンパクの役割が重要と考えられる。Orbitと相互作用するタンパクを同定するために、プロテオミクス解析をおこなった。大腸菌で発現させたGSTタグつきのOrbitを初期胚抽出液中に添加してGSTプルダウンをおこなった。共沈されたタンパクをSDS-PAGE後、検出されたポリペプチドをLC-MS/MSにて解析し、マスコットサーチによりタンパクの同定を試みた。その結果、Orbit結合タンパクの候補として、non-muscle myosin II heavy chain、細胞皮層のタンパクであるβスペクトリン、Toucanタンパク、Dynein heavy chain (Dhc64C)などが同定された。これらのタンパクとOrbitとの関連を確かめるために、現在、Orbitとの免疫共沈、細胞内共局在、遺伝学的相互作用の解析をおこなっている。さきに、雄減数分裂細胞においてOrbitがその分裂後期にセントラルスピンドルから収縮管上に移動することをみいだした。この細胞では、中心体より伸長した星状体微小管の+端が細胞皮層に接触した位置で分裂溝の陥入が開始される。Orbitは微小管の+端に集積されるが、このときOrbitを介してMyosin IIと微小管系が相互作用し、それが収縮管形成のトリガーとなるというモデルが考えられた。
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FEBS J. 274
ページ: 1818-1832