DNA損傷、障害によって引き起こされるDNA複製阻害を回避する機構には、DNA修復、DNA相同組i換え、DNA損傷チェックポイント、ヒストン修飾など多様な核内機構が連携して複雑なネットワークを形成している。本研究では、これらネットワーク形成に関与するDNAモータータンパク質(出芽酵母Mgs1、分裂酵母Fbh1)の機能解析を行い、以下のような結果を得た。 1.大腸菌からヒトまで保存されたMgs1の解析から、 Mgs1がDNAクランプ(PCNA)と物理的相互作用することを発見した。さらに、この結合が、RAD6(DNA損傷トレランス)経路に依存したPCNAのユビキチン化を負に制御することで、通常増殖期におけるRAD6経路の不適切な活性化に伴うゲノム不安定化を抑える働きをしていることを明らかにした。 2.分裂酵母Fbh1は、N末にユビキチンE3リガーゼであるSCF複合体形成に必要なF-boxドメイン、 C末にRep/UvrDタイプDNAヘリカーゼドメインを持っている。F-box変異体を用いた研究から、F-boxドメインが、DNA損傷に依存したフォーカス形成に必須であることを発見した。さらに、このF-boxドメインの変異体は、核内への移行に欠損が生じていることを見いだし、SCF(Fbh1)複合体の形成が核移行に必須であることを明らかにした。今回の2つのゲノム安定性に関わるモータータンパク質の研究から、SUMO/ユビキチン修飾経路がこれらのタンパク質を適切な場所ヘリクルートする動態制御因子として機能していることが明らかになった.
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