分裂酵母のDNA複製チェックポイント経路において、Mrc1はRad3-Rad26複合体によるCds1のリン酸化を仲介するメディエータータンパク質として機能している。 近年、出芽酵母において、Mrc1が複製フォーク上にローディングされ、複製フォークの安定化に直接的に関与する可能性が報告されている。そこで、DNA複製フォークの安定化維持におけるMrc1の機能を明らかにするために、Mrc1と相互作用する因子をTwo-hybrid法により探索した。その結果、Mcm7のC末端領域の単離に成功した。さらに、Mrc1との結合が損なわれるMcm7の1アミノ酸置換株(mcm7^<F722E>を作成した。mcm7^<F722E>株では、DNA複製チェックポイント作動時のCds1キナーゼの活性化が不十分であり、弱いHU感受性を示した。以上の結果よりMrc1とMcm7の特異的な相互作用が、DNA複製フォークの安定化及びチェックポイントの活性化に深く関わる可能性が示唆された。 さらに、ChIP法により、分裂酵母のMrc1が複製の進行に伴い、複製フォークの上を移動しているという結果を得た。Mrc1の複製フォークへの結合は、ATM様キナーゼであるRad3の機能やチェックポイントメディエーターとしての機能に必要なMrc1のリン酸化に依存しないことが分かった。また、Mrc1のDNA結合領域がMrc1の複製フォークへの結合に必要であることを明らかにした。 さらに、Mrc1がphosphodegronに依存したSCFによるタンパク質分解制御を受けることを示す結果も得た。
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