紫外線照射等によるDNA損傷により、DNA複製が停止する。この危機的状況は、RAD18の機能により回避される。通常の状態でRAD18タンパクは、細胞核内に斑点状または拡散した状態で存在する。ヒト培養細胞にUVを照射してDNAが傷害されると、RAD18タンパクは核内に分散した後にDNA複製部位に集積した。また、RAD18転写は細胞周期で転写が制御されておりS期で転写量が最大となる。RAD18は精巣で高い発現がみられ、特に精母細胞のXY染色体が存在する領域で発現が高いことが確認された。本研究により、紫外線照射等によるDNA損傷に応答してRAD18タンパクがDNA損傷部位へ集積する機構に関して有意義な知見が得られた。さらに、ヒトRAD6B・RAD18タンパク複合体を精製し、フォーク型および長い1本鎖DNAに結合する性質をもつことを示した。このDNAへの結合には、RAD18のSAPドメインが必要であった。SAPドメインに変異を導入したRAD18タンパクは、DNAへの結合強度が著しく低下し、DNA傷害に応答しておこるDNA複製停止部位への集積がみられなかった。また、この変異RAD18タンパクは、RAD18欠損細胞のUV感受性を回復させる活性も失われていたことから、ヒトRAD6B・RAD18タンパク複合体は、フォーク型または長い1本鎖DNA構造を認識して結合することにより、停止した複製フォークに集積し、複製後修復を推進すると結論した。この研究成果は、複製後修復でRAD6B・RAD18タンパク複合体が停止した複製フォークのセンサーであることを示しており、発がん防御の戦略を立てるための重要な知見を供給した。
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