研究課題
ゲノムDNAは、細胞内ではピストンなどの蛋白質と共に様々な高次クロマチン構造を形成することによって、染色体機能が維持され、クロマチン構造を必要に応じて変化させることで様々なDNA代謝反応(転写、複製、修復、組換え)に寄与している。新規ヌクレオソームの形成と脱構築には種々のヒストンシャペロンが関与している。新規ヌクレオソームの形成因子の知られるCAF-1やASF1は様々なDNA代謝経路に関わり、恒常的ゲノムの安定性に種々の要因で影響をあたえることが予想される。我々は遺伝子ノックアウトが容易なニワトリのDT40細胞を用いて、クロマチン構造構築・変換に関与する遺伝子群の系統的な変異株の作成を行っており、HIRA欠損により種々の遺伝子発現の変化が起こるが、生存には必要ではないこと、3種のCAF-1サブユニットのconditional変異株の解析から、CAF-1欠損はS期の遅延、DNA合成能の低下、新規DNA合成鎖上へのすばやいヌクレオソーム形成能の低下を伴い、致死であるがことを明らかにした(業績1)。したがって、本システムはヌクレオソーム形成粗過程及びこれに関連したクロマチン機能の研究に適した系であると考えられた。また、変異CAF-1p150発現株の解析から,新規DNA合成鎖上へのrapidヌクレオソーム形成能の低下が複製鎖の伸長を阻害すると考えられ、これがCAF-1のPCNA結合能に依存性であることから、CAF1がPCNAを介したDNA複製伸長装置と密接に関連していることが示唆された(業績1)。同様にASF1 conditional変異株を作成し解析したところ、CAF-1変異株と比較すると弱いものの同様の表現型を示し、致死であった(業績2)。したがって、動物細胞では確かに複製に共役したクロマチン形成はCAF-1とASF1に依存し、細胞増殖に必須であることがわかった。興味深いことに、ASF1 conditional変異株に種々の変異をもつASF1を導入したレスキュー法から、CAF-1とHIRAとの結合能を持たないASF1の変異はヌクレオソーム形成及び細胞増殖に影響せず、ヒストンH3と結合できない変異ASF1も生存可能であることが明らかになった。このことはCAF-1とHIRAを介さないASF1依存的クロマチン形成経路もしくはクロマチン形成とは異なるASF1の機能が生存に重要であることを示した(業績2)。
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