本研究はDNA損傷後、修復蛋白によって損傷修復が行われた後、どのような制御機構によって正常な細胞周期に戻っているのか、あるいは損傷を受けたDNAは修復されることなく癌化、または細胞死やその他の反応がおこっているのかを解明することにより、修復反応からその他のpathwayへのネットワークの解明を目的とするものである。そのため、まずUVやDNA架橋剤によるDNA損傷後において、複数の修復蛋白と共にその損傷部位に集積し機能しているFancD2をマーカーとして用いて解析をおこなった。 これまでDNA損傷後において、FancD2の損傷修復機能については、乳癌原因遺伝子であり修復タンパクの一つであるBRCA2と一部同じ経路で機能し、共に損傷部位に集積していることを明らかにした(J.Biol.Chem(2006))。さらにFancD2が、ユビキチンリガーゼであるFancLによりモノユビキチン化されることにより損傷部位に集積し、機能するメカニズムについての解析をおこなってきた(Genes to Cells(2007))。 現在、このようなFancD2の修復部位における機能は、モノユビキチン化によって制御されていることから、モノユビキチン化FancD2に特異的に結合する蛋白を新たに同定しており、その機能の解析をおこなっている。今後、モノユビキチン化FancD2とその結合蛋白の機能を明らかにすることによって、あらたなネットワークの解明を目指す。
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