研究課題
家族性アルツハイマー病(FAD)の原因遺伝子であるプレセニリンPS1は、多くの膜蛋白質を膜内で切断するセクレターゼである。興味深いことに、PS1は、海馬のシナプス可塑性に必須の接着分子であるN-カドヘリンとシナプス上で共存している。細胞膜上でN-カドヘリンはカテニン系の分子を介し、ア細胞に安定した接着基盤を提供していると考えられてきた。しかしながら、われわれは、これまで、接着分子と考えられていたカドヘリンが、神経伝達依存性にPS1により切断を受けて、膜から細胞内、核へと輸送され、βカテニン核シグナル(Wntシグナル)を調整していることを見出した。さらに、PS1のこの働きは、GSK3βというリン酸化酵素によって制御されることも明らかになった。これによりわれわれは、いろいろな修飾を受けたPS1が分子スイッチとして「膜の接着」と「シグナル伝達」のクロストークを制御している可能性を想定している。この研究課題で、PS1を介したカドヘリンーカテニン複合体の機能的実態を解明することで、神経伝達をトリガーとして引き起こされるPS1-カドヘリンーカテニン複合体によるシグナル伝達制御という一連の流れを明らかにし、それが、アルツハイマー病(AD)の病態解明につながることが期待される。この研究では、PS1がGSK3βによりリン酸化という修飾を受けることでその局在機能が変化すること、さらに細胞の接着という要因がPS1のコンフォーメーションを変化させて、その機能が調節を受けることがあきらかになった。これが、PS1の機能調節、ひいてはアルツハイマー病における病態の解明につながり、新たな治療戦略につながることを期待している。
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