研究課題
【目的】生体内に存在する様々な有機化合物は高度に発達した器官である腎臓や肝臓により体外に排出される。この排出を担うのは種々の有機化合物トランスポーターである。ここ10年で、これらのトランスポーターの大部分の分子実体は同定されてきた。しかし,排泄の最終段階を担うOC (organic cation)/H^+交換輸送系に関しては20年程前からその存在は知られていたが、いまだにその実体は解明されていなかった。最近申請者はこのトランスポーターのヒト及びマウスにおける分子実体を明らかにすることに成功した(PNAS,2005)。そのトランスポーターはバクテリアでは多剤耐性に寄与しているMATE (multidrug and toxin extrusion)ファミリーの輸送体のorthologueであり、このトランスポーターをMATE1と名付けた。申請者の研究目的はMATE1トランスポーターの機能と構造の決定及びその輸送メカニズムの解明である。また、MATE1と相互作用し、その輸送活性を調節するような機能タンパク質を探索する。【実績】MATE1の点変異体を複数作製し(膜貫通領域の極性残基部分)、HEK293細胞に発現させ、MATE1の基質であるTEA(テトラエチルアンモニウム)の取り込み活性に与える影響をRIトレーサー実験により調べた。この結果より輸送活性及び機能性アミノ酸残基を推定した。また、MATE1変異体の基質特異性や、輸送活性に及ぼすpHの影響に対する変化についても詳細に解析を行うことによって、OC/H^+交換輸送における基質認識機構や、プロトンとの交換輸送機構を考察した。また、MATE1の機能と構造を理解する上でその分子単体に注目し、大量発現・精製及びそのリポソームヘの再構成系を確立した。大量発現系は、昆虫細胞を用いた発現系を用いている。申請者の研究室ではすでに、哺乳類の小胞型グルタミン酸トランスポーターについて、昆虫細胞を用いた発現系を用い大量発現に成功している。また、大量発現したタンパク質を精製・リポソームに再構成し、活性の測定を行う系を既に構築済みである。こうした技術をMATEタンパク質の機能解析に応用し、多剤排出タンパク質としてのMATEの輸送機構の全貌解明に活用する。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
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