本研究ではCFTRに結合する分子複合体を抽出し、その結合分子がMAPK依存的にいかに機能し、成熟型CFTRの生成・分解および形質膜移行を多元的に制御するか、その分子基盤を解明することを目的とした。従来の研究で、yeast two-hybrid systemによりCFTR R-domainに接着する分子を検出し、3種類の遺伝子(the CFTR R-domain Interacting Protein(CRIP) : CRIP1・CRIP2・CRIP3)をクローニングした。CRIP遺伝子ファミリーは、相同性が高くZinc Ring Fingerを有するC末端領域で、CFTR R-domainに結合し、中央部でシャペロン分子Hsc70と結合する。本年度は特に、CRIP遺伝子ファミリーが分子シャペロン複合体の中で、MAPK依存的に成熟型CFTRの生成もしくは分解をいかに制御するか、その分子機構を解明することを試みた。CRIP1・CRIP2・CRIP3はともに核と細胞質に存在するが、細胞質に存在するCRIPのみ切断修飾を受けること、およびMAPKの活性化状態に応じ、切断効率および切断後の分子安定性が制御されることが示唆された。Cos7細胞にCFTRとCRIPを一過性に強発現させた際には、CRIP1は細胞内MAPKが活性化されている状態でCFTRの生成を促進し、MAPKが不活性化されている状態でCFTRの生成を抑制した。一方、CRIP3はMAPKの活性化状態に関わらずCFTRの生成を抑制した。CRIP1はMAPKのコンセンサスリン酸化サイトを有し、リン酸化サイトの変異体では、促進効果を発揮できないため、MAPKは直接的にCRIP1をリン酸化して、リン酸化されたcRIP1がCFTRの生成を促進することが考えられた。CRIP遺伝子ファミリーは、Hsc70を含む分子シャペロン複合体の中で、MAPK依存的に、成熟型CFTRの生成・分解を多元的に制御することが示唆された。
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