ABCC11多型に依存した解剖学的な耳垢腺の差異を明らかにすることと、ABCC11が移送する基質の同定、ABCC11を基盤とした膜移送体複合体の同定を目的としている。 1.ABCC11抗体の作製 融合蛋白質として発現させて回収した60アミノ酸(Guo抗原)を使用する抗原と、15合成オリゴペプチドを使用する抗原とを用いた。Guo抗原によって得られた血清をアフィニティーカラムによって精製し、免疫組織化学的に組織を染色できる抗体を得ることができた。合成オリゴペプチドによる免疫によっても、特異抗体が得られた。 2.湿型あるいは乾型耳垢腺の免疫染色 上述した抗体によって、湿型あるいは乾型耳垢腺の免疫染色を行うた。ABCC11蛋白質は、どちらの型の耳垢腺においても腺の管空面に面した細胞膜(apical side)に染まり、差があるようには思えなかった。また、細胞質内にもうすく点状に染まった。 3.電子顕微鏡によるABCC11の細胞内局在 湿型耳垢腺の免疫電子顕微鏡観察をおこなった。断頭分泌物に膜成分としてABCC11が含まれていた。細胞内局在についての詳細は、今後の検討課題である。 4.ABCC11発現細胞の薬剤耐性試験 当初分離したABCC11mRNA発現LLC-PK1 cell lineは、抗体ができた時点で、ABCCl1蛋白質の発現の有無を確認した。mRNAは大量に発現されているが、蛋白質としては極めて少量か、ほとんど発現していない。このような、細胞は使用できないため、現在TetOff系の確立を行っているところである。 5.機能解析のためのABCC11発現膜vesicleの単離(バキュロウィルス系) ABCC11蛋白質が移送する分子同定のためにバキュロウィルス-Sf9発現系による膜分画回収、膜vesicleの調整を行った。今後、基質を加えてから膜を回収しての質量分析を行っていく。
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