アスピリンを代表とする非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の主な副作用である胃潰瘍(NSAIDs潰瘍)が臨床現場で大きな問題になっている。特に問題なのがNSAIDs感受性に関する患者さんの個人差であるが、NSAIDs感受性を規定する遺伝子多型(SNP)は全く同定されていない。我々は、NSAIDsによるアポトーシス誘導が、NSAIDs潰瘍に深く関与していることを発見し、その誘導機構を解明した。そこで我々はNSAIDs耐性遺伝子の同定を試み、TETRANというヒト遺伝子を同定した。我々はTETRANが12回貫通型のMFSファミリーに属する薬剤排出ポンプであり、NSAIDsを細胞外へ排出することにより細胞をNSAIDsに耐性化していることを見いだした。そこで本研究で我々は、TETRANの機能解析を行う。 本年度我々は、ヒト培養細胞にTETRANを発現させることにより、細胞のNSAIDs輸送が促進されることを見出した。また他の基質に対しても解析を行ったところ、NSAIDsのようなアニオン性の基質の輸送には丁ETRANが関与しているものの、カチオン性の基質の輸送には関与していないことが分かった。また種々のpH条件下でTETRANの輸送活性を測定したところ、より高いpHで輸送活性が促進されることが分かった。 以上の結果は、最近同じく同定されたMATE1の性質と対照的であり、興味深い。来年度は更なる機能解析を行う。
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