研究課題
特定領域研究
近年、イオン透過に限らず細胞のあらゆる機能が細胞膜のイオンチャネルによって制御されるという知見が報告されている。これまでその分子本体として同定された陰イオンチャネル群には、CFTR、CLCなどがあるが、増殖、分化、接着、分泌などのあらゆる細胞機能に関連するという知見がある。私たちは近年、Ca^<2+>活性化Cl^-チャネル関連分子rCLCAのcDNAをラットからクローニングして、その遺伝子の唾液腺における発現とCa^<2+>活性化Cl^-輸送との関連を明らかにしてきた。rCLCA分子がトランスポートソーム(膜輸送複合体)を形成して、多機能を発揮するのではないかと仮説を立てて、細胞生物学的、電気生理学的、あるいは免疫組織学的研究を進めた。本研究の結果、rCLCA(rCLCA-f)は唾液腺導管上皮細胞に発現してCl^-再吸収に関与することによって、最終唾液の低張化などの唾液分泌の恒常性に寄与することが明らかになった。さらに、細胞膜上のみならず、多くのrCLCA-f分子が細胞内輸送小胞膜上に局在することが明らかになったが、その輸送に係る意義を明確にしていく必要がある。他方、スプライシングの違いによるrCLCAのアイソフォーム(rCLCA-t)は主に基底細胞などの未分化細胞内に局在して、β_1-integrinを介する細胞接着を抑制することがわかった。rCLCA-tは特異的に、三量体Gタンパク質βサブユニット類似体である活性型Cキナーゼ受容体1(RACK1)と相互作用をすることが明らかになった。以上からタンパク相互作用の相違によって、rCLCAに異なる機能が発現することが示唆された。これらの研究成果を基盤にして、口腔内でのイオンあるいは水輸送制御機構や細胞接着機構に着目しながら、唾液腺組織における分化による情報転換の解明に発展させることに興味がもたれる。
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