器官発生において細胞の移動および分化に関与する細胞外シグナルの作用をゼブラフィッシュの側線系を用いて明らかにすることを目指し、これまでに新規の変異体を同定してきた。 平成18年度においては、ゼブラフィッシュ側線変異体、Slow tempo、walk off(軸索ガイダンス・細胞移動の変異体)、shane(側線原基と神経の細胞間相互作用および軸索伸長の変異体)、mujina(細胞分化と神経軸索の維持に異常をきたす変異体)の4系統似絞ってで原因遺伝子のクローニングを試みたが、shaneおよびmujinaでクローニングに成功したものの、残る2系統ではゲノム情報の不正確な領域にはまりこんでしまい、遺伝子の同定には至らなかった。また本題からはやや逸脱するがmujina変異体においては側線神経のみならず、血管系・色素細胞系に異常を引き起こすことを発見した。特にmujina変異体の血管系の表現型は興味深く、血管発生期の内皮細胞の配列パターンは正常に形成されるが、血管内腔ができないために血流が流れることができない。そこで同定したmujina変異遺伝子をさらにヒト培養細胞系で解析し、培養細胞でも同様の働きを持つことを明らかにした。mujina変異体ではコレステロール代謝系に異常があり、側線神経の変性のメカニズム、血管内腔形成異常のメカニズムにmujina遺伝子がそれぞれどのように作用していくかを解明していくことで、細胞外環境の研究のブレークスルーとなる可能性を期待したい。
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