リンパ組織においてリンパ球が産生、分化、維持されるためには、リンパ球とストローマ細胞間あるいはリンパ球間に存在する細胞外微小環境が必要である。この細胞外微小環境は、ケモカイン、サイトカインなどの細胞外因子と細胞内シグナル伝達が、互いに整合的に作用するシグナルネットワークにより制御される。本研究は、TRAF6依存的なシグナル伝達や、そのシグナルにより誘導される細胞外因子から成立する2次リンパ組織内シグナルネットワークを解明することを目的としている。本年度はTRAF6欠損マウスの脾臓およびパイエル板の構築を免疫組織染色法で解析した。その結果、TRAF6欠損マウスでは脾臓の白脾髄領域においてB細胞濾泡と辺縁帯の形成異常を認めた。また脾臓よりRNAを抽出し、ケモカインの発現を検討したところ、TRAF6欠損マウスではB細胞濾泡形成に必須なCXCL13の発現が激減していた。また脾臓に存在するIgM陽性B細胞の比率、絶対数ともにTRAF6欠損マウスでは減少していた。B細胞濾泡形成にはB細胞と脾臓ストローマ細胞の相互作用が必須であることが知られている。TRAF6欠損マウスの脾臓構築異常がB細胞などの造血幹細胞由来の細胞に起因するかどうかを検討するためにTRAF6欠損胎仔マウスの肝臓細胞をX線照射したRAG2欠損マウスに導入したキメラマウスを作製した。キメラマウスの脾臓構築を検討したところ全く異常が観察されなかった。さらにTRAF6欠損マウスより濾泡樹状細胞を分離し、CXCL13の発現を検討したところ、CXCL13は全く発現していなかった。以上の結果は、TRAF6が脾臓ストローマの一つである濾泡樹状細胞においてCXCL13の発現を誘導することでB細胞濾泡を形成していることを強く示唆している。
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