卵子を取り囲んでいる透明帯は単なる物理的バリアーとしての細胞外マトリックスであるだけでなく、同種の精子のみを選別して通過させることで、生物学的バリアーとしても機能している。また受精後にはその性質を変化させることで、2つ以上の精子が受精する多精子受精を防御する役目も担っている。本研究では、我々の作製した種々の遺伝子組換えマウスを活用することで、透明帯による受精制御メカニズムの解明を目指す。 我々が作製したカルメジン欠損マウスの精子は透明帯に結合できないために雄性不妊となる。そこで野生型の精子とカルメジン欠損マウスの精子から、tritonX114抽出により膜タンパク質を濃縮して抽出し、2次元電気泳動により比較した。その結果、カルメジン欠損マウスで特異的に消失する新規タンパク質をいくつか同定した(spot1-3)。その一つspot3は2つの疎水性領域を持つことから、抗体を作製して解析を行ったところ、精子特異的に発現する18kDaのタンパク質であることが判明した。またカルメジン欠損マウスの精子では欠失していることを確認できている。現在、ノックアウトマウスを作製して機能解析を行っている。 ところで血圧制御因子であるangiotensin converting enzyme(ACE)を欠損してもカルメジンと同様の表現型を示すことが報告されていた。我々は、抗体を作製するとともにカルメジン欠損マウスと比較することで、カルメジン欠損マウスの精子ではADAM3が消失すること、またACE欠損マウスの精子ではADAM3が疎水性画分から殆ど消えることを見出して論文報告した。
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