細胞表面は全ての外界との最初の接点である。ヒトを感染症やガンから守る免疫系においても細胞表面のレセプター群が異物(非自己)認識の最前線にあたる。そのため、免疫系の機能制御には細胞表面レセプター群のリガンド分子認識機構の理解が欠かせない。そこで、本申請では、難治リウマチ性自己免疫疾患である強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis、以下ASと略す)の原因遺伝子である細胞表面抗原HLA-B27(主要組織適合性抗原(MHC)の一つ)によるAS発症の分子機構を明らかにする。具体的には、疾患の進行に伴い、細胞表面に発現する軽鎖(β2m)欠損HLA-B27ホモダイマーについて、免疫細胞表面抑制レセプターであるLeukocyte Ig-like receptor(LILR)群との分子認識を相互作用解析と立体構造解析により明らかにする。 昨年度に引き続き、本年度は、X線結晶構造解析を目指して、β2m欠損HLA-B27のホモダイマーを大腸菌での封入体発現と巻き戻しにより安定なサンプルの調製を目指して複数のコンストラクトを作成したが、蛋白質の分解を抑制することができなかった。他方、NMRによる相互作用解析に向けて、β2m欠損HLA-B27のホモダイマーに結合するLILRB2を^<15>Nラベル体で作成したところ、HSQCスペクトルで充分に分離したシグナルを得ることができた。現在、アミノ酸の主鎖の帰属の作業に取組んでいる。帰属ができれば、β2m欠損HLA-B27のホモダイマーとHLA-B27の通常型で認識様式の差異を明らかにすることができる。
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