研究概要 |
高内皮細静脈(HEV ; high endothelial venule)は、血流中を循環するリンパ球と特異的に接着し、リンパ球を免疫応答の起こる場であるリンパ節へ移行させる特殊な血管である。本研究においては、HEVのユニークな分化形質を規定する細胞外環境を、新規に樹立するHEV内皮細胞株を用いて解明する事を目的とする。我々はこれまでに、硫酸基転移酵素遺伝子欠損マウスを用いて、HEV内腔に存在する硫酸化糖鎖PNAd(peripheral lymph node addressin)が、HEVとリンパ球の特異的接着に必須の役割を果たす事を示して来た(J.Biol.Chen.,279:3058-3067,2004;Nat.immunol.,6:1096-1104,2005)。本研究では、(1)PNAdの生合成に関与する硫酸基転移酵素GlcNAc6ST-2がHEV特異的に発現することに着目し、その発現をEGFP(enhanced green fluorescent protein)レポーター蛋白質の緑色蛍光として容易に検出できるHEV培養内皮細胞株を新たに樹立する。(2)次にこの新規細胞株を、様々なシグナル分子、マトリックス分子、およびリンパ節由来の種々の細胞の存在下で培養を行う事により、HEV特異的遺伝子GlcNAc6ST-2の発現誘導をもたらす細胞外環境を同定する。(3)さらに、GlcNAc6ST-2の発現を誘導する細胞外環境により、HEV特有の丈の高いユニークな細胞形態および細胞下面へのリンパ球の潜り込みが促進されるか否かを検討する。本年度は、我々の樹立したGlcNAc6ST-2-EGFPノックインマウス(J.Biol.Chem.279:3058-3067,2004;Nat.Immunol.,6:1096-1104,2005)のリンパ節を採取し、HEV特異的モノクローナル抗体MECA-79を用いたMACS(magnetic activated cell sorter)細胞分離により、HEV内皮細胞株の調製を行った。この細胞株においては、EGFPの緑色蛍光を指標にしてHEV分化形質の一つである硫酸基転移酵素GlcNAc6ST-2の発現を容易に検出する事が可能である。次年度は、種々のサイトカインや細胞外マトリックス分子によるEGFP発現誘導を検討する予定である。
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