研究概要 |
細胞間の情報伝達や接着は,分泌蛋白質や細胞膜蛋白質によって制御されている。そのような蛋白質は,極性のある上皮細胞や神経細胞上では,その極性にそって異なる局在をしているものが多い。さらに,それらの蛋白質は糖鎖や脂質による翻訳後修飾を受けることによって,正しい機能を獲得する。例えば,ショウジョウバエの分泌性シグナル分子であるWingless(Wg)は,脂質修飾および糖修飾を受けた後,上皮細胞のアピカル側へと分泌される。また,ショウジョウバエの眼の形成に必須であるChaoptinという細胞接着因子も,糖修飾を受けた後,光受容細胞のアピカル側の細胞膜へと輸送される。しかし,これらの蛋白質の分泌や極性輸送の制御メカニズムについてはまだまだわからないことが数多く残されている。さらに,翻訳後修飾の制御メカニズムについてはほとんどわかっていないといっても過言ではない。そこで,我々は,ショウジョウバエを用いて蛋白質の分泌や極性輸送の制御メカニズムを解析したところ,分泌制御についてはTSG101と呼ばれる分子がWinglessの分泌に重要な役割を果たしていることを見出した。さらに解析を進めたところ,TSG101が関わる分泌過程はERからゴルジ体への輸送過程であることが明らかとなった。また,これとは独立に進めたChaoptin の極性輸送に関与する分子のゲノムワイドスクリーニングの結果,非常に興味深い分子を同定することにも成功した。
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