研究概要 |
巨大ひずみ加工プロセスに関するマクロレベル有限要素解析を行い,最大相当ひずみ値が6までの結果を得た.この結果と巨大ひずみ加工実験で得られた微細粒組織との定量的関係を構築し,実材料の組織形成を数値解析によって予測する手法へ展開した.一方組織形成に関する微視レベルでの検討では,転位集団を起点として再結晶核が形成される数理モデルを作成し,再結晶粒が成長する過程のモンテカルロシミュレーションについて検討した. 微細粒材料の機械的特性の予測に関して2つの検討を行った.第一の検討は転位による内部応力場の形成に関するものである.幾何学的必要(GN)転位密度に空間勾配があると,長範囲効果を持つ内部応力場が生じることが知られている.粒界を転位が貫通しない条件を与えて内部応力場の評価を行った.しかし結晶粒微細化に伴う初期降伏応力の寸法依存性は現れず,ひずみ硬化係数のみが上昇することがわかった.第二の検討は,結晶粒界によって転位の運動が阻止されることによる転位放出抵抗の上昇の効果および,転位の平均運動距離が短くなることの効果に関するもので,前者の効果により初期降伏応力の寸法依存性が現れ(H18年度成果),後者の効果によりひずみ硬化率が粒径の微細化とともに大きくなること(本年度成果)がわかった.これらの効果を導入して計算した応カ-ひずみ曲線を実験結果と比較したところ,微細粒材料の塑性変形の初期段階(ひずみ数%以下)でのきわめて大きな加工硬化挙動を再現することが観察された.
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