研究課題
本計画研究では、巨大ひずみ加工による高密度格子欠陥材料の創製、および、そのための巨大ひずみ加工による高密度格子欠陥組織形成メカニズムの解明を行う。平成18年度は以下の点を明らかにした。純アルミニウムと純銅は面心立法(FCC)構造を有しているが積層欠陥エネルギーが異なる純金属で、ECAPやHPT、およびその組合せを利用して巨大ひずみ加工を施した。純アルミニウムではいずれの純度も2パス後に最大硬度に達し、さらにパス回数を増やすと硬度が減少する。減少の度合いは5N-Alで大きい。一方、純銅ではどちらも硬度の低下は見られず増加した。8パス後の試料の平均結晶粒は4N-Alで1.5μm、5N-Alで15μmであり、純度が高くなるほど超微細化は困難になった。純銅では純度にかかわらず、1μm以下の微細結晶粒が得られた。ひずみ勾配が付与されるHPT加工のような不均一変形加工では、形状不変加工であるARB, ECAPや圧延等の均一変形に比べて、得られる組織が微細であり、歪勾配の付与が結晶粒の微細化に有効であることが明らかとなった。HPT加工で準安定オーステナイトステンレス鋼SUS304を動的に正変態・逆変態させ、結晶粒微細化に及ぼす動的変態の影響を調べたところ、動的変態させない場合は動的変態させた場合に比べて、同じ歪量であっても結晶粒がより微細化したことから、動的変態が結晶粒の微細化に有効であることが明らかとなった。Fe-0.03mass%CにHPT加工と400℃の熱処理を繰返し行ったところ、HPT加工の間に熱処理を行った方が熱処理を行わなかった場合に比べて、同じ歪量であっても結晶粒が微細化したことから、不連続加工中の回復過程が結晶粒微細化に有効であることが明らかとなった。数ppm〜数1000ppmの異なる炭素量をもつ純FeにHPT加工を施した結果、炭素量の多い試料ほど結晶粒は微細化した。また、低炭素の試料では、著しく転位密度の異なる結晶粒が形成した。FCC構造のSUS310S粉末にMM処理を施すと表面領域では結晶粒径約50nmのBCC構造のナノ組織が形成され、粉末内部領域では結晶粒径約200nmのFCC構造の等軸微細結晶粒組織が観察された。SUS310Sでは室温の冷間強圧延でも加工誘起マルテンサイト変態は生じないことから、これは巨大ひずみ特有の相変態が生じたことになる。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (6件)
Materials Science Forum
ページ: 1273-1278
Advanced Materials Research 15-17
ページ: 564-569
General Abstract : Electronic, and Photonic Materials Division, TMS (The Minerals,Metals & Materials Society)(eds : L. Qing & S.Kang)
ページ: 87-93
Acta Materialia 55
ページ: 1397-1406
Journal of alloys and compounds 434-435
ページ: 290-293
ISIJ International 47
ページ: 157-162