研究概要 |
本計画研究では、巨大ひずみ加工による高密度格子欠陥材料の創製、および、そのための巨大ひずみ加工による高密度格子欠陥組織形成メカニズムの解明を行う。平成20年度は以下の点を明らかにした。 本年度は通常の円盤状試料よりも10倍大きい直径100mmのリング状試料でHPT加工が可能であることを示し、さらに、角状の薄板材にも利用できるHPS(High Pressure Sliding)法を新たに開発した。リング状試料を用いた純銅や純鉄のHPT加工によれば、組織や硬度は相当ひずみの一義的な関数として表された。しかし、純アルミニウムと違って硬度測定値は最大値を示さず、一定レベルに直接飽和することが分かった。純アルミニウムの積層欠陥エネルギーが純銅に比べて大きく、転位の消滅が起こり易いためと解釈された。 純Tiに、室温、5GPaでIPT加工を施すことで、高転位密度を有する300nm程度のサブミクロン結晶粒からなるω相が形成した。引張強度は1870MPa、破断伸びは5.5%であった。一方、150℃で加熱してω相をα相へ逆変態させ、それにより形成したバイモーダル組織を有する試料では、引張強度は1100MPaの高強度を維持し、破断伸びが50%まで向上した。 ミリング容器などから混入される不純物の影響を防ぐためにあらかじめ純Tiでコーティングした純鉄粉末を室温と極低温で剛処理した。いずれの場合も層状構造が観察され,結晶粒微細化に重要な役割を持つことが示された。極低温で加工された場合、層の幅が微細であり,極低温では転位などの格子欠陥の回復が抑制されることにより,巨大ひずみ加工による結晶粒微細化に極めて有効であることが明らかとなった。
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