研究概要 |
本年度はチャネルエンジニアリングに向けて、カーボンナノウォール(CNWs)を構成するグラフェンシート構造・形状制御及び電気特性の解明を目指し、下記の新たな知見を得た。 電子デバイス応用に向けて、CNWsの電気特性と合わせて電子状態を調べる事は重要である。そこで、n型にドープしたCNWsの電子状態を調べるために、ラジカル注入型プラズマCVDを用いてCNWsの作製を用いて行った。との際、ドープ量および形状制御のために添加ガスとしてN2 : 0〜5sccm及びN2/02 : 5/5sccmを導入した。添加N2ガス0, 1, 5sccm及びN2/O2混合ガス添加を用いて作製したそれぞれのCNWsを走査型電子顕微鏡で観測した結果、N2ガス流量が大きいときには形状が密になっているのに対して、O2ガスの効果によってより基板から垂直方向に配向し、一枚岩の形状となることが判明した。これまで成長中のO2添加の効果について報告してきたが、O2は成長中の不純物等を除去し結晶性を向上させる効果がある。従って、N2添加にO2を混合添加することでO2添加と同様に一枚岩の形状を得ることに成功した。また、この時O2・N2混合添加CNWの膜中のNの量は同じ量のN2添加CNWと同じであり、その電気的特性はN2添加同様にn型伝導を示した。そこで、形状を変化させたCNWsに対して電子状態の変化を調べるために赤外吸収測定を行った。観測された赤外吸収スペクトルは価電子帯と伝導帯の有効状態密度を示しており、0, 1, 5sccmの順に吸収スペクトルが大きくなることがわかった。従って、N2添加量と共に有効状態密度が大きくなっていることがわかる。この時、N2添加5sccmとN2/O2混合添加CNWsでは波形が全く同じであり、N2添加において、CNW膜中のN2が電子状態を決めていることがわかった。つまり、N2ガス添加によって電子状態を制御可能であり、さらにN2/O2混合添加はその電気的特性と形状を独立に制御できるため、CNWsの作製法として非常に有効であることがわかった。
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