研究概要 |
これまでにケイ素-ケイ素三重結合化合物「ジシリン」が炭素-炭素多重結合化合物(アルケン類、アルキン類)と容易に環化付加反応を起こすことを明らかにしてきた。本研究ではジシリンと炭素-窒素三重結合化合物である有機ニトリル類及びシリルシアニド類との反応性について検討した。 ジシリンにアセトニトリル、ベンゾニトリル等の有機ニトリル類を反応させると、ケイ素-ケイ素π結合に対するニトリルC-N三重結合の[2+2]環化付加を経て1:3付加体である2, 6, 7-トリアザ-1, 4-ジシラビシクロ[2. 2. 2]オクター2, 5, 7-トリエン誘導体を与えた。 一方、ジシリンにトリメチルシリルシアニドを反応させると1, 4-ジアザ-2, 3-ジシラベンゼンとビス(シラケテンイミン)が生成することが分かった。シリルシアニドの窒素原子でジシリンケイ素への配位が起こるが、有機ニトリルのような[2+2]環化は進行せず、もう一方のジシリンケイ素へもシリルシアニドの窒素原子での配位が進行し、シアニド炭素原子間での結合形成によりジアザジシラベンゼン与えたと考えられる。また、シリルシアニドは極少量のシリルイソシアニド体との平衡混合物として存在することが知られているが、シリルイソシアニド体の方がシリルシアニド体より配位力が強く反応性が高いと考えられるため、微量のシリルイソシアニド体が末端炭素原子でジシリンケイ素へ配位することでビス(シラケテンイミン)を生成したと考えられる。 ジアザジシラベンゼンの単結晶X線構造解析により、骨格ケイ素原子が著しく非平面化しているがジアザジシラベンゼンはある程度の芳香族性を有しているものと推定され、理論計算もそれを支持した。また、ビス(シラケテンイミン)についても単結晶X線構造解析によりその分子構造を決定した。
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