テルピリジンの4'位にリンカーを導入してピリジンと連結させた配位子を合成し、これをPt(II)と自己集積的に錯形成させて矩形メタロホストを定量的に合成することに成功した。このホストは電子豊富な芳香族化合物であるベンゼンジオール類を取り込む。本研究において、この認識がπ-π相互作用や、ホスト空孔のCHとゲストとの間のCH---O水素結合、電荷移動相互作用が協同的に作用し、さらに大環状効果と誘導適合も働くことで達成されていることを、各種分光学的測定やX-線結晶構造解析により明らかにした。またDFT計算により、このメタロホストの空孔の内側は外側よりも正に帯電しており、これも内部でのゲスト取り込みを有利にしている要因であることがわかった。さて、salen部位を有する環状配位子の骨格にジフェニルエーテルを組み込んだ環状配位子を合成し、そのイオン認識能を検討した。この配位子とニッケル(II)との錯形成によって得られた環状メタロホストは非常に強くナトリウムイオンを認識し、1:1錯体を形成することがわかった。このときの会合定数はもとのホストと比べて約50000倍大きくなることを見いだした。つまりメタロホストへの変換によりほぼ完全な認識制御を達成できたといえる。メタロホストは同様にカリウム、ルビジウム、セシウムイオンとも強く錯形成し、スタッキング型自己集積を起こして高次会合体を形成していることが各種スペクトルから明らかになった。このような環状salen金属錯体の一次元集積はこれまでに例を見ないものである。
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