研究概要 |
クラスター骨格を構成する金属間の相乗作用を解明するために、クラスターを異種金属によって組み立て、その結果発現すると考えられる「異種金属効果」に注目した。ともに8族金属であるルテニウムとオスミウムからなる二核テトラヒドリド錯体Cp^*Ru(μ-H)_4OsCp^*と三級リン配位子の反応を、二核ルテニウムおよび二核オスミウムテトラヒドリド錯体の反応と比較した結果、リン配位子は反応初期段階にルテニウム上に取り込まれ、その後オスミウム上に分子内移動することが明らかになった。リン配位子には逆方向の動きはなく、この過程は不可逆過程である。これにはリンに対するルテニウムとオスミウムの結合解離エネルギーの差が反映されており、一新たに「熱力学的異種金属効果」を提案した。因みに二核ルテニウム錯体に取り込まれたリン配位子は2つのルテニウム間を可逆的に移動し、二核オスミウム錯体に取り込まれたリン配位子はオスミウム間を移動しない。さらに異種金属クラスターにおいてはリン配位子の取り込み過程が2つの等核クラスターに較べ大幅に加速されることが明らかにした。異種金属クラスターとすることで分子構造が非対称になり、また分子軌道に異方性が誘起されることをX線故造解析およびDFT計算により明らかにし、その結果, 大幅な加速が起こることを明らかにし、「速度論的異種金属効果」を提案した。
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