研究概要 |
前年度にRu_2, RuOs, Os_2型の三種類のテトラヒドリド錯体を用い、様々な三級リン化合物との反応を通じて、反応サイト、反応速度、三級リン配位子の分子内移動速度に関する異種金属効果を観察してきた。本年度はこれを三核ペンタヒドリド錯体に展開し、アンモニア活性化反応における異種金属効果について検討した。アンモニアとの反応に先立ち、Ru_2Os, RuOs_2,およびOs_3型ペンタヒドリド錯体を合成し、Ru_3錯体とその構造、電子状態を比較し、異種金属の導入によってもたらされる変化について考察した。次いで、Ru_3骨格に三重架橋オキソ配位子を導入するとアンモニア活性化が加速されるという事実に基づき、新たに合成した三種のペンタヒドリド錯体へのオキソ配位子の導入を試みそれに成功した。引き続きそれぞれのオキソ錯体とアンモニアとの反応における速度論的パラメータを求めて比較した結果、アンモニアの窒素一水素結合切断の速度比は錯体の組成によって大きく変化し無旧:k_<Ru3>:k_<Ru2Os>:k_<RuOs2>:k_<Os3>の値はおよそ1:8:12:5となった。 さらにルテニウムとイリジウムおよびルテニウムとロジウムから構成される異種金属三核ポリヒドリド錯体の合成を達成し、分子構造を明らかにするとともに三級リン配位子との反応を通じて、リン配位子の取り込みがルテニウム上で立体選択的に起り、引き続き二度のリンー炭素(sp2)結合の切断が起こることを明らかにした。 以上の結果を通じて、クラスター骨格に異種金属を導入した際に誘起される立体・電子的な異方性について論じた。
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