研究課題
Pd金属を中心金属とするロタキサン型錯体の合成とその動的挙動、並びに金属と他の元素との相互作用について検討するため、新規ロタキサン錯体を合成した。また、動的な挙動として、ロタキサン輪成分上での連続触媒反応について検討した。ロタキサンの輪成分に三座配位子構造を持たせ、軸成分中にピリジン型配位子を持たせた[2]ロタキサン型錯体は、末端封鎖法により合成した。さらに、その錯体構造を二つ持つ[3]ロタキサン型錯体、さらに軸上に二つのピリジン配位子構造を持ちながら、Pd金属錯体構造を1つもつ[2]ロタキサン型錯体も合成した。この軸成分中に配位可能なサイトを2つもつロタキサン錯体の温度可変HNMRを測定したところ、温度を上げていくことでシャトリングが起こり、50〜60℃で2つの配位子上を、輪成分がPd金属を携えたまま移動することがわかった。合成した3つのロタキサン型錯体をメタノールで処理したところ、軸成分中のプロパルギルウレタン構造が環化異性化し、アルキリデンオキサゾリジノン構造へと変化したロタキサン型錯体が得られた。特に、4つのプロパルギルウレタン構造をもつ[2]及び[3]ロタキサン型錯体では、4つすべてが環化異性化した生成物を与えた。この異性化反応はPd金属が触媒する異性化反応であるとともに、ロタキサン構造に特有であることもわかった。[2]ロタキサン型錯体で4つのプロパルギルウレタン構造の異性化が観測されたことは、軸上を金属を携えた輪成分が移動することで触媒反応が進行する極めて興味深い系であることがわかった。異性化したロタキサン型錯体では、軸成分がかさ高くなるために、輪成分はシャトリングすることができなくなっていた。この結果は、触媒が通過して反応が起こると、輪成分は元の位置に戻れないことを示しており、一方向移動型の分子モーターの基本動作に相当すると考えられる。
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