ロタキサンやカテナンを構成するコンポーネントは、共有結合ではなく空間的な結合で結ばれているため、その自由度と運動性には特別な注目が集まっている。このようなシステムにおいては、これまでの共有結合化合物には全く見られなかった現象がしばしば観測される。ロタキサンのような空間結合系は弱い相互作用を近傍効果によって増幅できるため、元素間に働く相互作用を解明するのに極めて適した系である。本研究では、ロタキサンを用いて遷移金属元素と高周期典型元素の間に生まれる相乗的な相互作用に的を絞ってその特性を明らかにするとともに、その結果をベースとしてロタキサン構造を鍵とする新分子触媒や分子モーターを開発し、その動的挙動を明らかとした。 昨年度までに分子内孔にパラジウムが固定化された輪状分子が、分子サイズを認識するような酵素様触媒として機能し、その空孔内を貫通できる分子に対してのみ高選択的に触媒能を発揮するという興味深い知見を得ている。そこで今回、その反応を連続的な反応系へと応用した。その結果、Pdを固定化したマクロサイクル触媒を用いてアリルウレタンを有する直鎖状高分子と反応させると、マクロサイクルの移動に伴い、アリルウレタン構造の分子内ヒドロアミノ化反応が高効率的に進行し、対応するポリオキサゾリジノンへと変換されることが明らかとなった。また反応終了後に塩酸を加えると、ポリマー中に貫通構造として含まれていたマクロサイクル触媒のデスリッピングが起こり、高分子から簡単に触媒が除去可能であることも分かった。
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