研究課題
我々は高い反応性を持つ鉄錯体の合成と取扱いに関して強みを持っており、その技術と経験を生かして今年度の本研究では、有用な素反応の中でも研究が遅れているC-H結合活性化を達成した。本研究では光照射を行うことなくC-H結合活性化を可能にするため、配位不飽和な有機鉄錯体、特にメチル基もしくはアルキル基を持つ配位不飽和なCp*Fe錯体を鍵前駆体と見なして、まずその合成を検討した。半サンドイッチ型鉄錯体Cp*Fe{N(SiMe_3)_2}のアミド配位子が塩基として働くことを利用して、イミダゾリウム塩との反応からN-ヘテロ環カルベン(NHC)を持つ鉄クロリド錯体を合成した。これをメチル化して生じる鉄メチル錯体は、NHCの窒素上の置換基がメシチル基の場合には常温で安定であるが、イソプロピレ基の場合には不安定であり、メタンを発生しながらシクロメタル化した。シクロメタル化した錯体は形式16電子の配位不飽和錯体であり、鉄に窒素分子を容易に配位させた。また、同じ錯体は室温でヘテロ芳香環のC-H結合を切断し、C-H結合に由来する水素原子をメタラサイクルに移動させてNHC配位子を再生することが分かった。さらに、鉄に結合したヘテロ芳香環がカテコールボランとカソプリングし、アリールボランとともにヒドロボレート錯体を生じることも見いだした。この反応を触媒的なC-H変換反応へと応用歩るため、メタラサイクルを解消した鉄メチル錯体も合成した。新たに合成したメチル錯体は、tert-ブチルエチレン存在下でヘテコ芳香環のC-Hボリル化反応を触媒することを確認した。さらに触媒反応に関わる錯体化学種を同定し、触媒反応サイクルを明らかこした。
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