研究概要 |
我々は,シクロデキストリン(CD)からπ共役ゲスト連結型メチル化CDを合成し,水-メタノール中で,自己包接錯体を形成させ,続く,ボロン酸アニリンとの鈴木-宮浦カップリング反応により,キャッピングを行い,固定化された[2]ロタキサンを合成した。この包接体は有機溶媒により単離・精製が可能であり,X線結晶構造解析により,π共役ゲスト分子が三次元的に被覆されていることを明らかとした。また,両端のアミノ基をエチニル基に変換し,銅塩存在下,Glaser反応により重合を行い,GPC及びMALDI-TOF-MS測定により,被覆共役ポリマーの生成を確認した。得られたポリマーは,対応する被覆されていない共役ポリマーに比べ,共役鎖間のπ-π相互作用が軽減されるため,有機溶媒に対する溶解性も高く,極めて高い発光特性を示した。また,共役モノマーの中央部に2つの完全メチル化CDを有する分子の自己包接に続く,重合反応により,フェニレンエチニレン構造を有する分子ワイヤの合成にも成功した。このポリマーは共役鎖の約95%が環状キラル分子であるCD誘導体により三次元的に被覆されているため,剛直性が向上し,偏光顕微鏡測定により液晶相(コレステリック相)が発現することが明らかとなった。また,AFM測定では,単一の分子ワイヤが極めて高い直線性を有する状態(長さ約200nm,高さ約1.8nm)で確認された。さらに,被覆により共役鎖上に発生したラジカルカチオンの寿命化が観測され,固体状態において時間分解マイクロ波伝導度測定を行うことに成功し,分子内電荷移動度がアモルファスシリコンに匹敵する高い値(0.5cm^2V^<-1>s^<-1>)を示すことが明らかとなった。
|