研究概要 |
我々は、近年、配位空間を制御することにより、5配位超原子価炭素およびホウ素種が合成できることを見いだした。本研究では、配位空間の構造などにより超原子価炭素およびホウ素種の性質がどのように変化するかを検討すると同時に、新たに精密に配位空間を制御するための系を設計して、これまでに全く前例がない6配位超原子価炭素化合物や4配位超原子価酸素化合物などの創製にも取り組んでいる。 今年度は、いままでに全く報告例がない超原子価6配位炭素化合物の合成に主に取り組んだ。まず、1,8-位に供与性酸素原子を有するチオキサンチル骨格を設計・合成した。チオキサンチル骨格を有するGrignard試薬の合成と新規チオキサンチリウムの反応、つづく脱水素酸化により、前駆体のアレンの合成に成功した。骨格にある2つの硫黄原子のジメチル化に苦労したが、最終的には、カルボランアニオンをもつ強力なメチル化剤を用いることにより達成することができ、X線解析にも成功した。前駆体のアレンとの構造比較・DFT計算および理研の橋爪博士との共同研究による精密電子密度解析により、中心炭素原子と配位子の酸素原子の間には、弱いながらも求引的相互作用が存在することが確かめられ、世界初の超原子価6配位炭素化合物の合成に成功したといえる成果をあげることができた。 現在さらに供与性酸素原子をOMeからOPhに代えた化合物の合成、ジメチル化以外のアルキル化、硫黄原子の酸化などに取り組んでいる。
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