本研究では二つのヘテロ元素がσ-結合を持つジヘテロ元素化合物に着目し、これを用いるヘテロ元素移動ラジカル反応の高次制御について検討した。具体的には、我々が既に開発している、有機テルル、およびアンチモン化合物を用いたリビングラジカル重合反応(TERP、およびSBRP)におけるジテルリド、およびジスチビンの添加効果について、以下の二点の検討を行った。 1)TERPにジテルリドを加えることで、特にメタクリル酸誘導体の重合の制御が向上することを明らかにしているが、その詳細は不明であった。そこでその原因を明らかにするため、反応速度論的な検討を行った。その結果、重合末端ラジカルとの反応による有機テルルドーマント種の生成反応において、ジテルリドが有機テルル化合物よりも100倍速いことから、これが重合制御に大きく寄与していることを明らかにした。さらに、この反応により生成するテラニルラジカルが、有機テルルドーマント種と反応し、対応する重合末端ラジカルを効率よく再生していることも明らかにした。このように、ジテルリドの添加によりドーマント種とラジカル活性種間に新しい平衡反応が存在することを明らかにした。 2)SBRPにおけるジスチビンの添加効果について検討を行った。MMAの重合を中心に検討を行った結果、ジテルリドよりもより少ない量の添加で、重合の制御の向上に極めて有効であることを明らかにした。その一方、ジテルリドの添加では観測されなかった、重合反応の遅延効果もあることがわかった。
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