研究概要 |
ジルコニウム錯体とホウ素化合物の元素相乗効果を用いて、二酸化炭素をヒドロシランによりメタンへと触媒的に還元する反応を見出した。 ジフェノキシド-アニソール配位子2,2'-(4-Me-C_6H_2OMe)-(6-^tBu-4-Me-C_6H_2O)_2([O_2O']^<2->)をもつジルコニウム錯体[O_2O']Zr(CH_2Ph)_2を、Zr(CH_2Ph)_4とH_2[O_2O']の反応から合成した。ジベンジル錯体にB(C_6F_5)_3を作用させることにより、カチオン性錯体{[O_2O']Zr(CH_2Ph)_2}[B(C_6F_5)_3(CH_2Ph)]を得た。このカチオン性錯体とヒドロシランの混合溶液に常温常圧で二酸化炭素を加えると、メタンとシロキサンの生成が観測された。例えば、ヒドロシランとしてMe_2PhSiHを用いて同様に反応を行った場合、メタンと(Me_2PhSi)_2Oの生成が見られた。触媒活性は配位子に依存する。例えば3座型[O_2O']配位子の換わりに、二座キレート型ビスフェノキシド配位子あるいは単座フェノキシド配位子を用いて、類似のジルコニウムカチオン種を調整し同様に二酸化炭素のヒドロシランによる還元反応を行ったが、3座型[O_2O']配位子をもつ金属錯体より、反応の進行が遅いことが観測された。同位体ガス^<13>CO_2をもちいた実験から、メタンの炭素は二酸化炭素に、水素はヒドロシランに由来することを明らかにした。また、反応は2段階で進行し、二酸化炭素は最初に2倍当量のヒドロシランと反応しシリルアセタールへと変換される。続けて、2倍当量のヒドロシランと反応が起こり、メタンとシロキサンが生成する。最初の段階では、ジルコニウム錯体が必須であり、二段階目はB(C_6F_5)_3のみで反応が進行する。また、ケイ素上に2つ以上の水素が存在しているときも同様に反応が進行することを見出している。
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