研究課題
低原子価状態の前周期遷移金属と電子供与性配位子であるフェノキシド配位子の相乗効果によるこれまでにない高い還元能力、反応性をもつ金属錯体の創製を目指し、オルト位に嵩高い置換機としてアダマンチル基を導入したフェノキシド配位子(OAr)をもつジルコニウム錯体の合成を行った。出発原料となるクロリド錯体Zr(OAr)_2Cl_2(1)はZrCl_4と2倍等量のArOLiを反応させることにより合成した。低原子価Zr(II)錯体の合成を目的に、錯体1と2倍等量のKC_8をトルエン中で反応させると2核錯体[Zr(OAr)_2]_2(C_7H_8)(2)が得られた。錯体2では、2つのZr(OAr)_2フラグメントがトルエンを挟み込んだ逆サンドウィッチ型構造をとっている。トルエン分子は捩じれた舟形構造をとる。錯体2のトルエン分子は容易に置換することが可能である。すなわち錯体2は、通常では合成、単離することが困難なZr(II)錯体の前駆体とみなすことができる。例えば、錯体2と有機アジドAdN_3の反応ではジルコニウム(IV)イミド錯体Zr(OAr)_2(NAd)(thf)(3)を与える。反応過程で有機アジドは2電子還元され、窒素ガスの発生を伴いながらイミド配位子へと変換されている。さらに、イミド錯体3は過剰量の有機アジドと反応し、テトラアゾブタジエン錯体Zr(OAr)_2(N_4Ad)(4)を生成する。一方、Me_3SiCHN_2と錯体2との反応では最初に単核錯体Zr(OAr)_2(N_2CHSiMe_3)(thf)(5)を与える。次に、配位子したTHF分子の解離を経て、2核錯体[Zr(OAr)_2(N_2CHSiMe_3]_2(6)を生成する。錯体6では2つの金属間をMe_3SiCHN_2の2つの窒素原子で(η^2:μ^2)型で架橋している。
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