研究概要 |
百個以下の原子からなる金属クラスターは,バルク金属では見られない新奇の構造・物性・機能を発現し,それらが構成原子数に応じて顕著な振る舞いを示すことから次世代の機能性物質の構成単位として大きな注目を集めている.本研究では,金属多核錯体と金属ナノ粒子結晶(約2nm以上)の中間サイズ領域の金属クラスターを有機配位子(チオールやホスフィンなど)で修飾した複合体を対象として,組成選択的かつ系統的な合成法の開発と構造・基礎物性の評価を行い,ボトムアップ的な複合化による機能性ナノ物質の創成に向けた指針を打ち立てることを目指している.本年度の実績は下記の通りである. 1)高分子保護金クラスターの空気酸化触媒活性の起源を明らかにするために,銀をドープした合金クラスターを合成し,金クラスターの電子状態と活性の相関を調べた.その結果,電子リッチな金クラスターが分子状酸素を活性化することによって,触媒反応が進行することが明らかになった. 2)リサイクルゲル浸透クロマトグラフィーと質量分析を用いて,アルカンチオール保護金クラスターの系統合成法を確立した. 3)20面体構造を持つ金13量体が連結したダイマーを初めて化学的に合成した.2量化によって新たな光学吸収や発光を見出した.
|