研究概要 |
1)高分子保護Auクラスターにおける魔法数の発見:本研究において,PVPに埋包されたAuクラスターのコアサイズをMALDI質量分析によって評価できることを見出した.マイクロミキサーで調製したPVP保護金クラスターのMALDI質量スペクトルを統計的に解析することで,35±1,43±1,58±1,70±3,107±4,130±1,150±2が魔法数であることを明らかにした.70量体以下の魔法数は,Woods-Saxonモデルにおける閉殻電子配置に近く,小サイズのPVP保護クラスターにおいても,気相孤立系と同様に電子的な安定性が支配的であることがわかった.100量体以上については,幾何構造もしくはポテンシャルの形状がPVPの配位によって変化するためと考えられる 2)チオラート保護Auクラスターにおける新しい安定組成の発見:我々は,高分子で一旦安定化した金クラスターをチオールと反応させると,従来法では得られない安定クラスター(金コアの質量数:11,26kDa程度)が得られることを見いだした.前者についてMALDI質量スペクトルの詳細な解析の結果,Au_<54>(SC_<18>H_<37>)_<30>, Au_<55>(SC_<18>H_<37>)_<31>の混合物であることを突き止めた.既知のAu:SRクラスターの組成と比較してみると,共通した傾向があることから,これらのクラスターも金クラスターコアを-SR-[Au(I)-SR-]_nが被覆した幾何構造をもつものと推定される.
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