研究概要 |
本研究では、ポリオキソメタレートにおける多核金属触媒活性点構造を原子レベルで制御することにより、新規触媒・反応系の開発を行うことを目的としている。本年度は、2個のアジド基により架橋され銅二核サイトを有する銅二置換ポリオキソメタレートの単量体[(n-C_4H_9)_4N]_4[γ-H_2SiW_<10>O_<36>cu_2(μ1, 1-N_3)_2]が、アルゴン雰囲気下でのアルキンと有機アジドの1, 3-双極環化付加反応に対して優れた触媒前駆体として機能することを見出した。塩基や還元剤などの添加物を必要とせず種々のアルキンと有機アジドを染料、光安定剤、農薬、生化学品などに利用される1, 2 , 3-トリアゾール化合物うと高選択的に変換可能であった。無溶媒条件でのベンジルアジドとフェニルアセチレンの大きなスケールでの環化付加反応(100mmol)では、21.5gのトリアゾール化合物を単離することができた。この時、TOFとTONはそれぞれ14800h^<-1>と91500に達し、これまでに銅触媒系の報告値(TOF : <1-408h^<-1>, TON : 1-1720)と比較しても最も高い値であった。1, 3-双極環化付加反応は1価銅アルキニル種が中間体であると考えられているが、その構造については未だに多くの議論がなされており、単核銅中間体や二核銅中間体が提案されている。しかしながら、これまでに銅二核サイトを持つ触媒を用いた報告例はなく、本研究が二核銅触媒の有効性を示した初めての報告例である。速度論と量子化学計算を用いて反応機構を検討した結果、Cu(I)二核サイト上でアルキンとアジドが協奏的に活性化されることが、本反応系における高い触媒活性の発現に起因することが明らかとなった。
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