研究概要 |
均一系触媒と不均一系触媒の概念を表面で融合し、固体表面を媒体とした新しい協奏機能触媒を創出するために、平成20年度は、シリカ表面に固定化したRu錯体を用いた選択酸化反応触媒とその表面モレキュラーインプリンティング触媒の設計を行った。シリカ表面にジアミン配位子を側鎖に持つRu錯体を固定化し、紫外光を照射すると固定化Ru錯体のp-cymene配位子を選択的に脱離できることを見出した。表面で特異的に形成される配位不飽和Ru錯体は、酸素分子を用いたシクロアルカン類の光選択酸化反応に優れた触媒特性を示した。FT-IR, XRF, XPS,UV/Vis, Ru K端XAFSによる構造解析および密度汎関数法を用いた理論計算により、紫外光照射によたて形成される固定化Ru錯体の構造を決定した。表面水酸基との反応によたて形成されるヒドリド錯体の配向の違いにより、触媒活性種と不活性種が紫外光照射によたて表面で可逆的に構造変化することを明らかにした。 更に、この固定化Ru錯体に目的触媒反応の中間体構造を模倣した構造を有する配位子を鋳型分子として配位させ、ケトン類の不斉水素化反応、ニトリル類の選択水素化反応、エポキシ化反応の形状・位置選択的触媒反応制御を意図したモレキュラーインプリンティング触媒も設計した。それぞれの触媒反応において、鋳型分子の形状に応じた形状選択性、位置選択性、不斉選択性が得られ、表面で骨的分子に応じた立体選択能を設計できることを明らかにした。 更に、本代表者らが開発してきたin-situ時間分解DXAFS法を駆使し、設計した固定化金属錯体の触媒反応過程における触媒自身の構造変化をリアルタイム追跡し、表面を媒体とした協奏触媒反応機構を解明した。
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