研究概要 |
第2級ホスフィンオキシドの炭素間不飽和結合との反応における、ホスフィンーホスフィン酸系やオキサゾリンーホスフィン酸系の性能を検討したが、ホスフィンとホスフィン酸等のブレーンステッド酸を別個に加えた系に比べて特段の効果は認められなかった。 しかし、前年度に見いだしたα,ω-ジイン類との付加環化反応の結果から想定されたヒドリド種の活性種としての関与に関しては、明確な結論が得られた。すなわち、ホスフィンオキシド及び添加するブレーンステッド酸の塩基性度及び酸性度や立体因子を変化させてNMRで検討した結果、これらの要因に支配される水素結合が反応の活性種の発生に大きく係わっており、H-P(0)R_2がPd中心と相互作用して発生するPd-P(0)R_2の酸素原子への水素結合が、P(0)R_2部分の解離を引き起こし、これにより配位座の低下したカチオン性Pd錯体が生成し、それに不飽和結合が配位することにより反応が進行することを明らかにした。また、水素結合した錯体は、X線結晶構造解析にも成功した。このことは、本反応がPdとブレーンステッド酸の両者の協奏触媒作用に基づくものであり、固体酸触媒に見られる酸性担体上での金属触媒の作用と対比できる新規概念の触媒作用を見いだしたものである。 上記の協奏機能触媒作用は、これまで困難であったジアルキルホスフィンオキシドの付加反応を初めて可能にしたばかりでなく、アルキルアリールホスフィンオキシドやジアリールホスフィンオイキシドとの反応性の比較から、ホスフィンオキシドの構造に依存して、律速段階が変化することを示唆する興味深い結果も得られた。
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