可視光エネルギーによって促進される有機触媒反応開拓を行った。基本コンセプトは、光を吸収するユニットと触媒機能を発現しうるユニットを、適当な配位子で架橋ないし(分子内系)、混合して(混合系)、前者で吸収した光エネルギーを後者に伝搬して、触媒反応を達成しようとするものである。光吸収ユニットとしては[Ru(bipy)_3]^<2+>(TB)様ルテニウム錯体を用い、触媒反応部位としては8族金属種を採用した。 分子内系については、種々の架橋窒素四座配位子(L)を含む置換活性なPd-Meユニットを含む二核錯体[(bipy)_2Ru(μ-L)PdMe(NCMe)]^<3+>が、オレフィンの二量化に対して触媒活性を示した。中でもビピリミジン架橋触媒がが最も高い活性を示し、置換基効果を実験および分子軌道計算によって明らかにした。また、可視光のみならず紫外光まで幅広く光エネルギーを吸収するためにナフチル基を導入した錯体を合成した結果、紫外光で励起してもエネルギー移動を経てRu上で発光すること、励起寿命が著しく伸長することが明らかとなった。スチレンとの反応では重合が進行することを見出し、励起寿命が伸長したために挿入反応が優先することが明らかとなった。 クロスカップリング反応についてはホスフィン配位子を含む二種類の触媒系を検討した結果、混合触媒系が高活性を示した。薗頭反応、Buchwald-Hartwigアミノ化反応、鈴木一宮浦カップリング、アリールハライドの還元反応や還元的ホモカップリング反応について、顕著な光照射効果および混合触媒系の優越性が観察された。また、本系は還元種[TB]^-からの電子移動によって促進されていることを明らかにした。 このように光増感作用を示す金属フラグメントと触媒活性を示しうる金属フラグメントを組み合わせることによって協奏的に有機触媒反応を促進させることに成功した。
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