研究概要 |
今年度は、これまでに得られた配位子を用いて高効率遷移金属触媒反応の開発に取り組んだ。 ニッケルアセチルアセトナートならびに我々が独自に開発したホスフィン配位子存在下、ドデシルフェニルスルフィドに対して1.5当量のブチルグリニャール反応剤を作用させたところ、対応する交差カップリング体であるブチルベンゼンが88%の収率で得られた。また、同様の条件下、イソプロピルグリニャール反応剤やシクロヘキシルグリニャール反応剤のような第二級アルキルグリニャール反応剤も用いることができる。第二級アルキルグリニャール反応剤と有機硫黄化合物の交差カップリング反応では、中間に生じる第二級アルキルニッケル中間体がβ-水素脱離を起こしやすいため、高収率で目的のカップリング体を得ることは困難であった。我々は、ホスフィン配位子とシクロペンチルメチルエーテル溶媒を用いることで同反応が効率良く進行することを見いだした。 触媒量の酢酸パラジウムとジシクロヘキシル(2, 6-ジフェニルフェニル)ボスフィン存在下、p-ブロモアニソール、モルホリン、tert-プトキシナトリウムをトルエン中で5時間加熱還流したところ、収率良く対応するアニリン誘導体がえられた。一方、同様の条件下トリシクロヘキシルホスフィンを用いた場合には目的物は全く生成しない。このボスフィン配位子はパラジウム触媒を用いる1, 3-ジケトンの活性メチレンのアリール化反応においても優れた配位子であった。1, 3-ジケトンから生じるエノラートは極めて安定であり、パラジウム触媒によるアリール化を受けにくい。かさ高いホスフィン配位子を用いることで効率よく合成することが可能となった。
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