研究概要 |
21世紀の最重要課題であるエネルギー・資源・環境問題を解決するためには、生命の機能原理を抽出・応用し、生命機能を凌駕する「生体模倣機能触媒化学」を創成することが必要不可欠である。本研究の目的は、「選択性に優れかつ環境負荷の少ない触媒反応の開発」を命題とし、次世代の「バイオインスパイアード触媒」を創製することである。本年度は、水溶性ニッケル・ルテニウムアクア錯体を用いて「水素のヘテロリティックな活性化を2回経由する水素からの触媒的な電子抽出(Chem. Lett. 2008, 37, 970-971)」と「HDと重水素が同時に生成する同位体交換(Dalton Trans. 2008, 4747-4755)」に水中・常温・常圧で成功した。さらに、反応で生成する低原子価錯体等の中間体を単離し構造を決定することにより、水中での触媒の関与した水素分子の活性化機構を解明した。このように、本研究は、「水中・常温・常圧での水素分子の活性化」というクリーンエネルギー変換システム実現への新しい道筋を提示し、化学、環境、エネルギーの分野において、基礎的研究を実用的応用に結びつける上で極めて重要な貢献を果たすものとして期待できる。本研究成果は、平成20年8月5日にプレスリリースし(場所 : 九州大学伊都キャンパス、説明者 : 小江誠司)、英国王立化学会Chemical Scienceと日本化学会のホームページで紹介され、毎日新聞、日経新聞、西日本新聞、読売新聞に掲載された。また、英国王立化学会Dalton TransactionsのHot ArticlesおよびTop 10 Most-Accessed Articlesに選ばれた。
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