研究概要 |
4核構造を有する希土類ポリヒドリドクラスターの中心に4つの金属と架橋した<μ4>_-Hが存在ずることをX線構造解析により明らかにしているが、X線では精度の点で問題があり、金属とヒドリドの結合長について議論することは困難だった。本年度は南カリフォルニア大学のロバートバウ教授との共同研究により、イットリウムポリヒドリド錯体の中性子回折を行い、ヒドリド配位子の精密な構造解析に成功した。これは<μ4>_-Hの配位様式を中性子回折によって明らかにした初めての例である。通常、二重、三重架橋と架橋数が増えるにつれて金属ヒドリド結合長は長くなる傾向があるが、このイットリウム錯体では四重架橋の結合長は三重架橋のものより短くなっており, 4核クラスターコア内の空間が比較的狭くなっていることを示している。 また、希土類金属とd-ブロック遷移金属を有する異種金属ヒドリド錯体は,金属間の協同効果が期待される興味深い錯体であるが、これまでほとんど報告例がない。本年度は、ハーフサンドイッチ型ルテチウムジアルキル錯体Cp*Lu(CH_2SiMe_3)_2(THF)(Cp*=C_5Me_5)を出発原料として用い、ルテニウムトリヒドリドホスフィン錯体Cp*RuH_3(Pme_3)と反応させることにより、トリメチルホスフィン上の一つのメチル基でC-H結合活性化反応を伴って、対応するLu/Ru異種金属ジヒドリド錯体が得られることがわかった。このフォスフィノメチレンで架橋された2核錯体にフェニルシランを反応させると、このメチレン上で脱水素シリル化反応が起こることが明らかとなった。
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