研究概要 |
我々はC_5Me_4SiMe_3をもつハーフサンドイッチ型希土類ビスアルキル錯体[Cp'Ln(CH_2SiMe_3)_2(THF)](1 : Ln=Sc, Y, Lu, Cp'=C_5Me_4SiMe_3)を水素などのヒドリド源と反応させることにより、四核構造を持つポリヒドリドクラスター[Cp'Ln(μ-H)_2]_4(THF)(Ln=Y(2-Y), Lu(2-Lu))が合成可能であることを報告した。今年度は、「希土類ヒドリドクラスター2とカルボニル錯体との反応」、「希土類とd-ブロック金属を含む混合型多金属錯体の合成」、などについて詳細に検討した。 2-Yと6、7族のカルボニル錯体との反応ではオキシカルベン錯体、オキシメチル錯体が得られた。一方、9族のカルボニル錯体との反応ではCO結合が切断されたメチルーオキソ錯体が得られた。これらの結果は、COの選択的な還元による炭化水素類の生成をもたらす新たな均一系触媒開発の手がかりを与えるものである。 希土類金属とd-ブロック金属を組み合わせた混合型多金属錯体は、異なる金属が協奏的に作用することで同種の多金属錯体には見られない特異な反応性が期待される。ここでは錯体1をビルディングブロックとして用い、d-ブロック遷移金属ヒドリド錯体([Cp^*RuH_2]_2など)との反応により新たに混合型多金属ヒドリド錯体が合成できることを見出した。これらの結果は、錯体1は混合型多金属錯体の構築に有用な前駆体(ビルディングブロック)であることを示している。 また、希土類側の活性化サイトであるアルキル基を残したままd-ブロック金属と希土類金属を結合させることにも成功した。すなわち、側鎖にリン原子を導入したシクロペンタジエン配位子を新たに調製し、希土類トリスアルキル錯体から希土類ビスアルキル誘導体を合成し、さらに白金ジメチル錯体 [PtMe_2(COD)]との反応により、リン配位子を通してd-ブロック側金属を結合することができた。新たに合成した混合型二核アルキル錯体はイソプレンの選択的3,4-重合反応を示すなど、混合型錯体の触媒としてのポテンシャルを示唆する結果を示した。
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