研究課題
波長約180mmの高強度近赤外レーザーパルスを用いれば、C_<60>の12価までの超多価カチオンがほとんど解離を伴うことなく生成する。我々はこのようなC_<60>の安定性を利用すると、パルス列を使って振動励起を制御できることを、レーザー場によって歪んだ断熱ポテンシャルを取り込んだ第一原理分子動力学計算(時間依存断熱状態法)によって明らかにしてきた。例えば、2つのパルス(光強度7×10^<14>W/cm^2、パルス長30 fs)を照射した場合、その時間差τを変えることによって、数十eVのエネルギーを持つ大振幅振動をh_g(1)やa_g(1)モードに選択的に誘起できる。次に、このように励起されたC_<60>がどのようにして解離するかをナノ秒の時間スケールのダイナミクスを追跡できる密度汎関数緊密結合法(DFTB)を用いて調べた。まず2つの5員環が直接繋がるStone-Wales(SW)転位が起こり、その後C_2やC_4が連続的に脱離していく。一般には最初の脱離の前にSW転位が複数回起こり、その回数は最初にどの振動モード(h_g(1)あるいはa_g(1)モード)が励起されたかに依存する。解離までの時間や解離の特徴について、注入されたエネルギーや励起振動モードとの関係を調べた。a_g(1)モードを励起した場合には、解離速度が統計理論に従う傾向を見せた。一方、h_g(1)の場合には、ケージ構造を保持してめ解離や、振動の一周期内の解離など、その特徴ごとに解離速度が段階的に変化するという結果が得られ、解離制御実験の機構を説明する非統計的な解離が起こることが見出された。
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