研究概要 |
複数の金属を同時に用いるとそれらの協同効果が期待でき、単一の金属を用いた時には見られない特異な反応性の発現が達成可能となる。この様な概念は古くからあるが、実際にこの概念を適用し特異な反応性を達成した例は非常に限られてきた。我々の研究グループでは、硫黄架橋二核ルテニウム錯体に着目し、この二核錯体存在下でのみ特異的に進行するプロパルギル位置換反応などに代表される触媒反応の開発に成功してきた。 本研究課題では、上記で示した硫黄架橋二核ルテニウム錯体を用いた新規触媒反応の開発とその新規触媒反応の反応機構について分子理論的な検討を加えることにより、その本生成の本質的な原理を明らかにすることに重点を置いている。本年度は芳香族化合物の不斉プロパルギル化反応の開発に焦点を当て研究を推進した。 既に見出しているプロパルギル位置換反応に有効であった光学活性チオラート配位子を有する二核ルテニウム錯体を用いて、芳香族化合物のエナンチオ選択的なプロパルギル化反応の検討を行った。N,N-dimethylanilineとプロパルギルアルコールとの反応では最高94%eeを達成した。また、2-methylfuranとの反応でも最高83%eeのエナンチオ選択性の発現が見られた。近年数多くの不斉Friedel-Craftsアルキル化反応が開発されているが、プロパルギルアルコールを親電子剤として用いた例は本触媒反応が初めてである。
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