研究概要 |
研究代表者らのこれまでの研究成果を踏まえて、申請者らの研究グループが開発に成功した複核金属錯体を触媒として用いたカルベン錯体の一種であるアレニリデン錯体を鍵中間体とする新規触媒反応の開発を目的としている。研究期間内に、開発に成功した触媒反応の反応機構に関する実験化学的な知見を得ると共に、当特定領域の研究者との共同研究による理論研究から分子理論的検討を加えて詳細な反応機構や電子構造を明らかにすることに焦点を絞り研究を行う。さらに、本研究で得られた情報をフィードバックし、触媒をより精密に設計することで、より高度な分子変換反応開発につなげることを研究目的としている。 本年度は上記の研究目的に対して以下の検討を行った。昨年度までの研究成果として、これまでに上記で述べた触媒的プロパルギル位置換反応の類似反応としてプロパルギルアルコールとオレフィン類のカップリング反応の開発に成功している。プロパルギルアルコールから系中で生成するアレニリデン錯体のβ, γ炭素-炭素二重結合間とオレフィンとの間でのアレニリデンーエン反応が進行し、炭素-炭素結合が新規に生成することで、1, 5-エンイン化合物が効率良くかつ高選択的に得られたと考えている。この新規触媒反応の反応機構を理論計算により検討したところ、当初推定していた協奏的にアレニリデンーエン反応が進行しているのではなく、段階的に炭素カチオン種の生成を伴い反応が進行していることを見出した。この理論計算によって明らかとなった反応機構の検討結果を踏まえて、反応中間体として生成すると推定される炭素カチオン種を適切なカチオン捕捉剤で押さえることができれば、オレフィン類の新しい官能基化反応開発に繋がるのではないかと考えた。実際に実験を行ったところ、予想通りオレフィン類の触媒的オキシプロパルギル化反応が進行することを見出した。
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