溶液内での化学反応やタンパク質場における反応のダイナミックスを解明することは、現在の理論化学研究の最も重要な課題の一つである。これら凝集系における化学反応を取り扱うためには、反応場としての溶媒やタンパク質の熱揺らぎの効果を取り入れた反応の自由エネルギー面の構築が不可欠であり、更に、溶質分子や反応部位に対する反応場の揺らぎに起因するダイナミックな応答を記述する動力学的方法の確立が不可欠である。本研究では、複雑な溶液、生体内反応の動力学に対して見通しの良い描像を与える反応経路ハミルトニアンをab initio電子状態計算に基づいて構築する理論的方法を発展させ、溶液内光化学反応や生体内反応、特にプロトン移動や電子移動反応のダイナミックスを明らかにすることを目的としている。
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